業務用エアコンの消費電力を最短で見える化|計算式・節電手順・更新まで
電気代が高止まりしている原因は「見えない消費」と「判断材料の不足」にあります。
本記事は、①10分で業務用エアコンの月額電気代の算出式、②今日から実践できる運用最適化、③更新に踏み切る客観基準の3点を紹介します。
条件が合う現場に向けては、圧縮機を使わず地下水を熱源とする「地下水エアコン」という選択肢もご案内します。
製造業の消費電力内訳
製造業の消費電力内訳は、生産設備が83%、残りの17%が一般設備(空調や照明)となっております。
空調は、外気量の調整や室外機回りの障害物の撤去、室内温度変更と生産設備の節電施策より手軽に消費電力を削減することができます。


(出典:夏季の省エネ・節電メニュー|経済産業省資源エネルギー庁)
電気代計算方法


消費電力を見える化できれば、月いくら電気代が掛かっているか、何を変えれば下げられるかが判断できます。
この章では最短で電気代概算を出すための計算手順を示します。
電気代(円)= 消費電力量(kWh)× 電力量単価(円/kWh)
消費電力量は、「消費電力(kW) × 稼働時間(h)(× 負荷率)」で求めます。
※冷房・暖房で消費電力が異なり、インバータ機は負荷に応じて変動するので注意しましょう。
1.消費電力(入力kW)を特定する
エアコンカタログ/仕様書の「定格消費電力(kW)」「入力(kW)」を確認します。(冷房時・暖房時の両方を記録)
馬力表示は、エアコン能力の目安となります。エアコン1馬力 ≒ 2.8kW相当となります。
ポイント
- 運転モード(冷房/暖房/送風)で消費電力は異なる。
- 外気導入・フィルタ目詰まり等で実負荷が上がると消費電力も上がる。
- 仕様書に「最大/最小」の記載がある場合は、通常運用の平均に近い定格を使うか、必要に応じて負荷率を掛ける。
2.エアコン使用時間を把握する
1日の運転時間 × 稼働日数で月間運転時間を算出します。
例)1日12時間運転 × 20日稼働 = 240時間/月
冷房・暖房の運転割合が異なる場合は、季節ごとに別計算すると精度が上がります。
3.電力量料金単価(円/kWh)を確認する
契約の料金メニュー/請求書を確認します。
季節別・時間帯別(夏季・平日昼間など)で単価が異なる場合があります。
ここでは概算として1kWhあたりの単価(例:20円/kWh、夏季25円/kWh 等)を使います。
※基本料金(デマンド課金)、燃調費・再エネ賦課金は別計上とします。
4.電気代を計算する
基本式:
電気代(円)= 消費電力量(kWh) × 電力量料金単価(円/kWh)
実負荷を考慮する場合:消費電力量(kWh)= 消費電力(kW) × 稼働時間(h) × 負荷率(0.5〜0.8目安)
計算例:
消費電力 5.0kW の業務用エアコン1台を、月240時間運転(12時間/日)、単価20円/kWhとすると
・1日あたり
5.0kW × 12h × 20円 = 1,200円/日
・1か月あたり
5.0kW × 240h × 20円 = 24,000円/月
業務用エアコンの電源


業務用エアコンは、製品の種類によって単相と三相があります。
単相と三相は、電気機器に電気を送り込む方法のことです。
単相は比較的消費電力の小さな電気機器に送電する際に用いられる方法で、三相は大型の電気機器に送電する際に用いられる方法です。
単相には100Vと200Vがあり、単相100Vの場合、送電する電線と受電する電線の2本で電気が送受電される仕組みです。
単相200Vの場合は、3本の電線によって電気が送受電されます。
通常、コンセントが2つ穴の場合は100V、3つ穴の場合は200Vで、100Vよりも200Vの方がより多くの電気を電気機器に送り込めます。
3馬力(約8.4kW)程度の小さな業務用エアコンは、単相200Vで稼働させることが可能です。
3馬力より大きい業務用エアコンの場合は、三相200Vを選ばなければなりません。
同じ「消費電力5kW」の機器でも、単相か三相か、100Vか200Vかで必要ブレーカーや契約が変わり、請求明細(基本料金・従量料金)も異なります。
この章では、業務用エアコンでよく使う電源方式を整理していきましょう。
単相と三相の違い(送電方式)
- 単相100V:一般家庭用の小容量。業務用エアコンでは原則使用しない。
- 単相200V:小型の業務用エアコン(目安:~3馬力程度)で使用。
- 三相(3相3線 200V):大型機器向け。電力を3つの位相に分けて供給するため、同じ出力でも電流が小さい。3馬力超は基本的に三相200Vを選択。
ポイント
供給方式(単相/三相)がエネルギー消費量そのものを増減させるわけではありません。
ただし、三相は大容量でも電流が少なく安定しやすく、効率の良い圧縮機やファンの採用に寄与します。
結果として実運用の電力ロスを抑えやすいのが三相となります。
電圧・配線・ブレーカーの目安
- 単相100V:2極プラグ(2穴)/小容量向け。業務用エアコンは基本対象外。
- 単相200V:3極プラグ(3穴)/小型の業務用壁掛け・天井カセット型等。
- 三相200V:端子台接続(動力盤)/中~大容量のパッケージエアコン全般。
概算の消費電力と電流の関係
- 単相: kW ≒ V × A × 力率 ÷ 1000
- 三相: kW ≒ √3 × V × A × 力率 ÷ 1000
三相は√3の分だけ必要電流が小さくなり、配線・遮断器容量を抑制できます。設計・工事は電気工事士の選定範囲です。
機種選定の実務ポイント(消費電力視点)
- ~3馬力程度:既設が単相200Vなら同等更新が容易。インバータ効率が高い機種を優先。
- 3馬力超:三相200Vが基本。インバータ×高効率圧縮機で消費電力を抑える。
- 外気導入・フィルタ目詰まりは消費電力上昇の要因。定期清掃・風量バランス調整で実消費電力を下げる。
- デマンド対策:同時起動を避ける、立ち上がりを段階的に起動、設定温度の最適化を行う。
さらに消費電力を根本的に下げたい現場では、熱源自体を高効率化する選択肢(例:地下水エアコン)が有効です。
現場条件に合致すれば、既存の業務用エアコン消費電力最大90%の削減が可能です。
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業務用エアコンの消費電力が増える原因


「以前より電気代が高い」「同じ設定温度でもエアコンの効きが悪い」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
業務用エアコンの消費電力が増える理由は、機器の不具合だけでなく運転条件や外部環境が影響している場合が多くあります。
ここでは、とくに現場で頻出する2大要因と今日からできる確認ポイントを整理します。
外気温と設定温度の差(ΔT)が大きい
外気温とエアコンの設定温度の差(ΔT)が大きいほど、圧縮機の負荷が上がり消費電力・運転時間が増加し、消費電力が増加します。
例:外気35℃で室内設定22℃(ΔT=13℃)より、設定26℃(ΔT=9℃)の方がエアコンの負荷が小さく、冬も同様に、外気5℃→設定22℃より、設定20℃の方が負荷は軽く消費電力を抑えることができます。
対策
- 設定温度を±1℃変更して様子を見る(体感と生産性に影響しない範囲を推奨)。
- サーキュレーターで温度ムラを解消し、過度な低温・高温設定を避ける。
業務用エアコンの経年劣化・汚れによる能力低下
年数の経過や部品摩耗、熱交換器・ファン・フィルターの汚れで熱交換効率が低下します。
その結果、設定温度へ到達しにくくなり、高負荷運転が長時間化して消費電力が増えます。
例:
- 圧縮機摩耗 → 冷暖房能力低下、吐出圧・吸入圧の異常。
- 冷媒不足/漏えい → 吸込み配管の霜付き、過冷却不足。
- 熱交換器の汚れ → 風量低下・高負荷運転。
対策
- 定期保守:月1回のフィルタ清掃(粉塵多は週1回)、年1回の内部洗浄(熱交換器やファン)。
- 点検:運転電流・高低圧・過熱度/各種数値を点検し、異常があれば専門業者に依頼。
- 設備更新の検討:既設のエアコン効率が著しく低い場合は、高効率機への更新や、現場条件が合えば地下水エアコン等の代替で消費電力そのものを下げる。
まとめ
- 業務用エアコンの消費電力増加は、①ΔTが大きい運転と②能力低下(汚れ・劣化)のケースが多い。
- 運用面の微調整(設定温度±1℃・気流最適化・フィルター清掃)で消費電力を抑え、点検で機器状態を把握。
- エアコン自体の更新や熱源方式の見直し(地下水エアコン等)で消費電力の根本対策を検討。
地下水エアコンの仕組み


再生エネルギー活用 地下水エアコンについて|アクアイースター
地下水は、多くの地域で通年15~17℃と安定した温度です。
低温な地下水を特殊パッドに滴下し、空気を直接冷やし冷房として使用することができます。
業務用エアコンのように圧縮機は使用しないため、消費電力を大きく削減することが可能です。
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